耐震強度偽装事件が発覚してから3年が経過し、2009年を向かえました。昨年11月28日の改正建築士法施行により、事件再発防止のための一連の制度改革も完了いたしました。その間、当協会は全力を上げて、建築物の安全性確保の実効が確保できる仕組みを構造設計者の立場から模索し、国などの行政機関に提案してまいりました。それらの提案のかなりの部分が、国が設置した審議会における各界から選ばれた委員の方々および国土交通省の担当者から、ご理解を得られ、制度化が実現しました。
建築基準法等の技術規定が、従来運用や解釈に幅がでて曖昧であったものを、明確化する改正となりました。一昨年の6月に改正基準法を施行した後、設計者と審査者の双方が周知するまでの数ヶ月間は、建築確認審査が停滞した期間もありましたが、それも今では正常化しています。この建築基準法の改正は、単に技術規定の改定に留まらず、設計者が申請する設計図書を全体で整合のとれたものにするとともに、特に構造設計の範囲において、設計の意図と内容を正確に記載することを求めたものでした。この改正は、構造設計者に、設計図書の記載の範囲に留まらず、設計内容について建築主や社会に説明責任を果たすまでを業務範囲とすることを、求めたものであると理解しています。
従来の建築士制度は、建築物の安全性に関し説明責任を果たすという重責を担う構造設計者が誰なのかが、建築主や社会から見え難いものでした。これを解消するため、建築士法が改正され、今回新たに一級建築士の中から構造専門の設計者として約6,700人の新資格者「構造設計一級建築士」が選抜されました。建築物の安全性を担う者の権限と責任所在を明らかにしたものです。本年5月27日からは、鉄骨造であれば4階建て以上などの一定規模以上等の建築物の構造設計には、この資格者が関与することが義務付けられています。
上記の重責を、業務を通じて全うする者には、正当な報酬が必要です。その観点から設計事務所の報酬のガイドラインを示す告示第1206号も改正されました。これは、従来は設計全体の相当業務量を規定していたものを、構造設計を分離して単独に業務量を規定し、構造設計料を算定する目安を明らかにしたものです。
これからは、構造設計者は、建築界はいうまでもなく社会全体から、構造設計の「日常の安心は勿論のこと災害時にも安全でいのちを守る」という重要な職務に関し、ご理解を得ながら、職業倫理を外さず、これまで以上に設計能力の研鑚に努め、説明責任を果たす所存です。当協会はそのような構造設計者を支援する活動をより一層展開するとともに、一連の制度改革が正常に機能するよう努力してまいります。
皆様におかれましては、ご支援、ご指導の程よろしくお願いいたします。
