『荷重』- 積載荷重
建物にはどれくらいの荷重を載せられるのでしょうか。

トラックなどには、載せられる荷物の重さが、荷台の後ろなどに表示されています。積載重量、最大積載量などと呼ばれています。たとえば、4㌧トラックの荷台には荷物を4㌧まで載せることができます。

これと同様に、建物にも「載せられる重さ」があります。もちろん、建物ごとに人や家具・荷物などをどのくらいまで載せることにするかを考え、「積載荷重」として建物自身の重さ(積載荷重に対して、屋根や床、柱や壁、窓や天井など建物自体の重量を「固定荷重」といいます。)に加算して設計をするのですが、建築基準法では表-1に示すように、「住宅」や「駐車場」など一般的なものについて、建物や部屋の種類・用途別にその最小値を定めています。(積載荷重は地震や風のような自然現象によるものでなく、人間がコントロール可能な荷重です。通常、1m2あたりの重量で表されます。)

表-1 建築基準法に見る積載荷重
使用状況によるのが原則ですが、「住宅」や「駐車場」など一般的な用途については建築基準法で最小値が決められています。
部屋の種類 床設計用の
積載荷重
架構設計用の
積載荷重
地震力算出用の
積載荷重
(1) 住宅の居室、住宅以外の建築物の寝室または病室 1800N/m2 1300N/m2 600N/m2
(2) 事務室 2900N/m2 1800N/m2 800N/m2
(3) 教室 2300N/m2 2100N/m2 1100N/m2
(4) 百貨店または店舗の売場 2900N/m2 2400N/m2 1300N/m2
(5) 劇場、映画館などの客席または集会室 固定席 2900N/m2 2600N/m2 1600N/m2
その他 3500N/m2 3200N/m2 2100N/m2
(6) 自動車車庫および自動車通路 5400N/m2 3900N/m2 2000N/m2
(7) 屋上広場又はバルコニー (1)の数値による。ただし、学校又は百貨店の用途に供する建物にあっては、(4)の数値による。

同じ住宅の居室についてみても、床用・架構用・地震用の3つの積載荷重が決められています。まず、床設計用積載荷重についてお話しましょう。

表-1によりますと、例えば「住宅の居室」の床は、人や家具などを1平方メートルあたり1800N(約180kg)以上載せることができるように設計するということになります。180kg/m2というと1平方メートルに大人約3人で、10畳のリビングなら大人約50人分の荷重があるとして、其れに耐える設計をすることになります。住宅にしては荷重を見過ぎなようにも思いますが、これは、たとえば本を入れたダンボールを積み上げる・ピアノを置く・など、荷重を集中的に配置した場合を考慮しているためです。

「事務室」は法令上2900N/m2以上と決められていますが、書類収納棚や金庫など重量物を載せても対応できるように4900N/m2とすることも多くなっています。

次に、梁・柱・基礎など架構設計用の積載荷重ですが、
人や家具が載る床はその周辺を梁で支えられ、梁は柱につながり、柱は基礎を介して地盤や杭で支持されています。つまり、床に載った荷重は、次に梁・柱・基礎などの架構で支えられることになります。

先に説明した「床設計用の積載荷重(住宅では1800N/m2)」では、荷重が集中した場合も考慮していますが、梁や柱および基礎を設計する場合には、それぞれが複数の床を支えているため、どこかに集中的に積載荷重が載ったとしても、他の床ではそれほど集中していない、たとえば、納戸は荷物でいっぱいでもそのとなりは廊下になっていて何も置いていない・本の山ができていてもその前は机だけ・といった具合で、積載荷重は平均化されますので、荷重としてはやや小さな値を考えておけばいいことになります。こうして決められた値が「架構設計用の積載荷重(住宅では1300N/m2)」です。


積載荷重には、さらにもうひとつ「地震力算出用の積載荷重(住宅では600N/m2)」があります。地震が起きた時、建物は地震により揺れますが、その揺らす力は建物の重さ(固定過重+積載荷重)に比例すると考えられています。この場合の積載荷重に集中や偏在を考慮する必要はなく、人や家具の重量の合計そのものが対象となります。その結果、「架構設計用の積載荷重」よりさらに小さな値となります。

以上のことから、基準法で決めた3種類の積載荷重は、
「床設計用の積載荷重」>「架構設計用の積載荷重」>「地震力算出用の積載荷重」の関係にあります。

このように、建物を設計する際の積載荷重は、設計する部位・目的に応じて変えて設計しています。建物は安全でなければいけませんが、安全だけでなく、経済的なことも考慮して、細かい配慮がされているのです。

新しい建物の場合には、建物の使い方を考慮して設計するので、どのような過酷な条件でも、例えばビルの屋上に土を盛って山を作り、大木を植えて、緑豊かな屋上公園を作り出すようなことも可能ですが、すでに建っている建物を利用して何かを計画する場合には、建物の設計段階で考慮した積載荷重が、思わぬ障害となることがあります。例えば、事務所専用のビルであったものを、1、2階だけ店舗としたいと思った場合に、表-1を見てください。積載荷重が、今までの事務所建築より店舗の方が大きい値となっています。この場合、はじめによほど安全に対してゆとりのある設計をしてある場合以外は、変更できないことになります。

一時期、ボーリングがはやり、多くのボーリング場が立てられましたが、競技人口が減ってきてボーリング場として経営が成り立たないので、この広い競技場をスーパーに変更しようとしましたが、積載荷重が足りないために建物を取り壊さなければならなかった例もあります。逆に、同じボーリング場の別の例では、はじめの設計段階で他の使い道も考えて大きめの積載荷重を採用しておいたために、建物を壊さずに転売することができたそうです。

屋上緑化は環境問題からは是非進めたいテーマですが、表-1の屋上広場の欄を見ていただくとわかるように、あまり大きな積載荷重ではありません。そのため、既存建物の屋上を緑で覆いたい場合には、積載荷重に見合った方法を採用する必要があります。(例えば、少数のプランターからつる性の葉を生い茂らす等。特に、屋上全面に土を盛るような場合には、床用も地震用も同じ積載荷重を考えなければなりません。)

このように、建物に何かを載せようとする場合には、まず、設計段階でどの程度の積載荷重を考慮しているかを確かめてから計画を推し進めるようにしてください。


(荷重部会 A.M.)