HOMEJSCAアーカイブス改正基準法の施行に関する最新情報 2007.6.11

改正基準法の施行に関する最新情報

JSCA 建築基準法等改正対策委員会

6月20日の改正基準法の施行日が近づき、確定された改正内容が次第に明らかとなってきた。JSCAでは、昨年度は「建築基準・審査指針等検討委員会」における改正法の内容に関する審議に加わり、今年度は(財)建築防災協会、(財)建築行政情報センターを事務局として設けられた「建築基準・指針等施行連絡会」に委員を派遣し、改正基準の運用に関する検討に参加してきている。連絡会には構造基準・プログラム・指針等の三つのWGが設けられた。

今回の改正は根本的な考え方として設計者性悪説によって行なわれた感があり、全ての設計者に検討項目や手続き上の書類作成業務の増大を招くことになった。「法は最低基準であり、それ以上に設計者として必要な配慮を行う」という認識で誠実に設計していた人にとっては憤りを感じるところもあるかもしれない。JSCAはさまざまな提案をしてきたが、意にそぐわない結果となった点も多々ある。そのような状況ではあるが、現在も運用においてよりよい方法を模索しているところである。

極めて短期間に行なわれた今回の改正は矛盾がいろいろとあり、施行後にはさまざまな問題点も浮かび上がってくることが予想される。短期的には、それらを整理し、国交省に提示して告示レベルの改正に結びつけていくことが必要である。長期的な視点では、設計者性悪説に立脚する根本的な考え方を改善するため、今後の実績の積み重ねにより設計者として信頼を得ること、また、社会のためにもよりよい制度を提案し法改正に結び付けていくことが採るべき道と考える。5年後、10年後を見据えて、設計と法制度の関係を考えていくことも必要である。

以下に、上記連絡会での動きも踏まえ、現在までに明らかになっている情報と構造設計での対応についてお知らせする。

改正法の施行状況、法制度の将来像などについて、今後も会員の皆様の情報提供と活発な議論をお願いしたい。


1)改正内容の公式情報

改正の情報は下記ホームページで閲覧可能である。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/h18_kaisei.html
下記のような多くの項目が含まれているので、内容についてコメントする。
  1. 改正建築基準法
  2. 改正建築基準法施行令
  3. 改正建築基準法施行規則/機関省令 【第1弾】
    ***構造にはあまり関係ない
  4. 改正建築基準法施行規則/機関省令/建築士法施行規則(案) 【第2弾】
    *  施行規則 本文(新旧対照条文)
    ***確認申請に必要な図書の規定
    *  建築基準法施行規則の一部を改正する省令(新旧対照条文)
    ***上記規則の別表、構造図や構造計算書の内容が規定
  5. 関係告示
    構造計算概要書、応力図、基礎反力図及び断面検定比図の様式を定める件
    ***構造計算概要書の内容、応力図、断面算定表の作成要領が規定
    建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係告示
    ***新設、改定告示が掲載されている。
主要告示の内容を次表1に示す。
新設もしくは大幅改正の告示は3種類、改定された主な告示は4種類あり、これ以外にも条文相互の整合性を図るため30件の告示が改正された。
下記に主要告示を示す。

表1技術規定に係る主な告示
告示番号 名称/対応法令/内容
592新設 建築物の構造方法が安全性を有することを確かめるための構造計算の方法
法第20第二号イ及び第三号イ
  • 許容応力度計算に用いる構造計算の方法の規定
  • 保有水平耐力計算に用いる計算方法
  • 限界耐力計算に用いる増分解析
593大幅改正 国土交通大臣が指定する建築物を定める件(適合性判定を要する建物)
令第36条の二第五号
  • 適合性判定を要する建物を規定
594新設 保有水平耐力計算及び許容応力度等計算の方法
令第82条第一号、第82の二、第82の三第一号及び
第82条の六第二号ロの規定
  • 架構の寸法、耐力、剛性、剛域その他の構造計算に用いる数値
  • 複数の仮定を考慮する場合
  • 壁の開口の扱い、非構造部材の定義*1
  • 部材剛性、基礎ばねの扱い
  • 非構造部材の影響の考慮
  • 壁の多い建物のフレーム地震力
  • 4本柱の建物
  • 突出部分の局部震度
  • 層間変位の計算方法*2
  • 保有水平耐力の計算方法*3*4
  • 偏心率の計算方法
595改正 特定建築物の地震に対する安全上必要な構造計算の基準(昭和55第1791号)
令第82条の六第三号
  • 従来のルート2相当の構造計算の規定
  • アスペクト比4以上の建物の計算
  • 冷間成型角形鋼管の規定
596改正 DsおよびFesの算定(昭和55第1792号)
令第82条の三
  • 従来慣用的に用いられていた方法が規定された
597改正 Zの数値、Rt及びAiを算出する方法(昭和55第1793号)
令第88第一項、第二項及び第四項
  • Rt及びAiの算出において、基礎固定とすること*5
598改正 限界耐力計算(平成12第1457号)
令第82条の5
  • 限界安全変形角の制限*6
  • 損傷限界時の検討において、地盤増幅率は略算法のみ
  • 安全限界時の検討において精算法を用いる場合の地盤の条件を規定

※技術基準の改正内容理解の助けとして、主な改正点を挙げると以下となる。

*1  RC造の開口付き耐震壁の剛性低減率、強度低減率の評価に当たって、開口の縦寸法の階高に対する比が追加された。開口部の上下の端部がはりに接する場合にあっては、当該壁を一の壁として取り扱ってはならないことが規定された。

*2  層間変形角を算定する際の階高の取り方が床から床までと規定された。

*3  必要保有水平耐力計算に当たってのDS値の評価は、架構がメカニズム状態を形成した時点の部材パラメーターを用いることが規定化された。荷重増分法では、原則として押し切ることが必要となった。

*4  保有水平耐力時における脆性破壊を生じさせない為の部材のせん断強度設計について、設計用せん断力の算定では、部材端の曲げ降伏モーメントから計算されせん断力に対する割増係数が導入され、部材毎に1.1から1,25と規定された

*5  地震力計算における建物固有周期の算定で精算法を用いる場合には、部材の初期剛性を用い、部材のひび割れや地盤バネの影響を考慮してはならないことが明確化された。

*6  限界耐力計算における安全限界変形の制限値が、層間変形角で1/75以下と規定された。

2)告示に関する技術解説書

告示を補う意味で技術的助言が策定、技術解説書と合わせて示される予定であるが、原稿作成中の状況である。(財)日本建築防災協会・(財)日本建築センターが主催・共催する改正基準法講習会が4月末から6月にかけて開かれたが、講習会テキストでは告示制定の技術的背景の説明に留まっており、設計を行なうには情報として不十分と思われる。建築基準・指針等施行対応連絡会の構造基準WG(兼解説書編集委員会)において、従来からある「建築物の構造関係技術基準解説書」(いわゆる黄色本)の2007年版が作成中であり、そこでは告示の運用基準が示されることになっている。但し、発刊予定は7月末となっており、当面の設計には間に合いそうにない。JSCAからもWGに委員を派遣しているので、情報が得られ次第、会員に情報の紹介して行くことを考えている。また、講習会での質疑に対しての回答も国土総合研究所・建築研究所を中心として作成中であり、まとまった段階で技術解説書を補う公式の回答として発表される予定である。

3)プログラム関係

6月20日の時点では新しい国土交通大臣認定プログラムは存在しない。5月18日に告示が出されたが、それだけではプログラム化するための細かな点が不明であり、プログラムは講習会資料の解説に書かれている内容にそって各社が開発作業をしている状況である。7月末に「建築物の構造関係技術基準解説書」が出版される予定であり、プログラムの性能評価で細かな計算方法が追加される可能性もある。プログラムメーカー各社では改正された法規に対応したプログラムを順次提供するとホームページなどで公表されているので、数ヶ月以内にはかなりの機能がプログラムに組み込まれていると予測されるので、時々確認されると状況把握ができる。

性能評価を取得した大臣認定プログラムはいつ頃世の中に出てくるか現時点で予測することは困難であるが、早くて年明けごろと予想されている。またメーカーによっては7月頃から告示対応版のプログラムを提供するところもあるようだが、大臣認定を取得するプログラムとは別の製品になると公表している会社もある。

設計実務においては、構造計算の方法が大きく変わったわけではないので、当面は現在使っているプログラムを工夫しながら使い続ける、または近日中に各社から提供される対応プログラムを導入する対応を考えることになる。20日以降の構造計算書を現在の認定プログラムで作成する場合は1)の内容を参考に技術基準を理解して使うことが必要である。非認定の汎用プログラムなども当然使用できるが、新しい技術基準に該当するように使用していくことが必要である。

6月20日現在で大臣認定プログラムがないことの暫定措置として構造計算プログラム配信センターという組織の設置が検討されている。これは現認定プログラムでメーカーがサポートを継続するものを適合性判定機関に配布し、構造計算適合性判定機関での判定作業の効率化を図ろうというものであるが、現認定プログラムの問題点はさまざまなところで指摘されており、それをそのまま使うことの問題点は注視して行く必要がある。また、新基準対応版であっても、その内容はオーソライズされたものでなく設計者、判定者とも注意が必要である。


4)審査・検査・変更について

確認申請図書の内容、構造計算概要書、応力図や断面算定表の作り方が施行規則で定められ、審査等指針の告示により、主事等審査、適合性判定、中間検査、竣工検査の内容が明らかとなった。

<構造計算書の作成>

構造計算概要書の添付が義務付けとなる他、分かりやすい応力図や断面算定表を作ること、また構造計算書では、構造上の特徴、設計方針の記述を充実させることが必要となる。これは審査の迅速化が一つの目的であるが、それだけではなく設計を充実させるという本来の意味からも重要なことと考える。構造計算概要書の記述内容のサンプルは近いうちに指針等WGより示される予定である。

<確認申請図書の不備>

設計図書の差替え、訂正はできないことと規定されたが、軽微な不備の場合は補正が、不明確な点がある場合は追加説明書の提出が求められる。軽微な不備とは「誤記、記載漏れその他これに類するもので、申請者が記載しようとした事項が容易に推察される程度のもの」と定義されている。内容違いによる修正、差し替えは不可能であるが、設計者の意図が明確である場合のヒューマンエラー的な間違いは補正が可能と考えられる。JSCAでは、建築基準・指針等施工対応連絡会の指針等WGにおいて、さらなる現実的な運用を提案しているところである。

いずれにせよ申請提出前に十分に設計の時間を確保し、意匠・構造・設備の整合性を図るための時間を見込んだ設計スケジュールの設定が必要である。これらへの対応は単に構造設計者だけではできないので、建築事務所や発注者にも理解を求める必要がある。JSCAでは建築士会連合会、建築家協会、建築事務所協会連合会などとこの件について協議をしてきた。

<着工後の変更への対応>

よりよい建物を作るために細かな調整は着工後も続けられ、それらは本来、設計者の責任において安全性を確認しながら対応していくものである。現行法規でも構造に関わる変更は原則として全て計画変更が必要であるが、細かい調整が変更と扱わないのが慣例だった。どの程度から変更申請が必要かも定かではないが、計画変更の必要性は認めるとしても、申請時に適合性判定が行なわれたものは、変更申請においては変更の内容に関わらず適合性判定が必要になり、時間と費用がかかることが問題である。JSCAでは指針等WGにおいて、全体のモデル化に影響しないような変更(例えば杭の偏心による基礎梁補強)は簡易な審査方法とすることを提案してきた。望ましいシステムとして、構造の軽微な変更(変更申請不要)を作ることを目指してきたが、早期の実現はかなり困難である。

代替案として、あらかじめ変更内容を想定しておくことにより、現場での変更があった場合にも構造計算を伴う計画変更としない(=適合性判定不要)という手法を探っているところである。杭の偏心による基礎梁の変更、小梁・スラブの調整などをこの手法で取り扱うことを協議中である。


5)6月20日前後の取扱い

既に、新構造基準への適用、適合性判定の要否が公表されているが、それらに加えて設計図書と審査指針の適用関係を下に示す。20日以前に着工した建物でも、計画変更の場合は新基準への対応や適合性判定は不要であるが、図書は新制度が適用されるので注意が必要である。

6月20日前に確認申請が完了し、20日以後に着工する建物は、新構造基準への対応が必要であり、中間検査や竣工検査の際に新基準に対応しているかどうかを主事等のみにより再審査されることになる。場合によっては自主的な適合性判定を用いるケースも出てくるので要注意である。

6月20日を跨いで確認申請が行われる場合は、審査途中で新構造基準への対応が審査されるので、必要な場合は追加説明書などでの対応となる。適合性判定は適用されない。




以上、現時点では改正法の施行について不明な点が多くあります。構造設計者として最善を尽くすことは考えるとしても、新制度に慣れるまでの経過期間が必要と考えます。その主旨に基づき、5月31日に指導課庁宛に以下の要望書を提出した。