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2019年を迎えて

 

2019年1月
一般社団法人 日本建築構造技術者協会
会長 森高 英夫

新年あけましておめでとうございます。

本年は、「平成」から新しい年号に変わり、次の時代に向かう節目となる年です。一方、JSCAも平成元年(1989年)に社団法人化し、本年7月に30周年を迎えます。奇しくも、JSCAは平成の時代の変遷とともに活動の歩みをすすめてきたと言えます。この時代にJSCAが築き上げてきた様々な成果・実績等を活かして、私たちは次の時代の大きな変革に立ち向かっていかなければなりません。そこで、“『変革』-建築構造の未来-”をテーマにしてJSCA法人化30周年記念事業を企画しております。6月の総会で詳しい内容を公表したいと思っておりますので、期待していただければ幸いです。

昨年10月に免震・制振用オイルダンパーの検査データ改ざん事案が国土交通省から公表され、私たち建築構造技術者はその内容に驚愕するとともに強い憤りを覚えました。現在、「当面の安全性検証」に時間を取られ、クライアント対応に苦慮されている会員も多くおられると思います。大地震後においても建築物の継続使用性を確保するためには免震・制振技術は欠かせないものですが、その根幹を担う免震・制振部材の性能が信頼できない事態は重大です。免震・制振構造の信頼性確保に向けて、根本的な課題と対策は何かを私たち建築構造技術者も考えていかなければなりません。


さて、JSCA会長に就任して4年目を迎え、本部・支部役員をはじめ多くの会員の方々と力を合わせて、下記の2018年度重点目標を中心に様々な活動に取組んでおります。

(1) 会員の技術向上とJSCAの持続的発展に向けた活動

現在の会員数は、正会員3,878名を中心に全体で4,402名となり、1年前に比べて微減で推移しながら徐々に正会員の世代交代が進んでいる状況にあります。JSCAの活動を中長期にわたって安定的に継続していくためには、中堅・若手世代の会員の増強とこの世代の技術・技量の向上が重要な課題です。会員委員会を中心に、本部・支部において会員勧誘活動を強化しており、徐々に成果が出てきました。また、構造デザイン発表会、スキルアップセミナー、技術委員会報告会、賛助会員との技術交流会などの開催を通して会員の技術・技量の向上に資する活動に力を入れています。特に、名古屋で開催された「JSCA構造デザイン発表会2018」には、過去最多の参加者が集い、89作品のプレゼンテーションに対して熱心な議論が行われました。この発表会には多くの中堅・若手構造設計者も参加し、彼ら・彼女らのモチベーション向上のみならず教育・育成の重要な機会となっています。

(2) JSCA建築構造士のブランド力向上の検討

JSCA建築構造士の有資格者が減少する中、この資格の位置づけ・あり方についてJSCA建築構造士制度委員会を中心に議論が行われており、課題と対策案が整理されているところです。今後は、各委員会と意見交換しながら、具体的対策を実行していきます。構造設計一級建築士の制度が定着し登録者数は9,800名弱になりましたが、社会は、より一層信頼できる建築構造設計者を求めています。そのためにも優れた技術力・デザイン力およびコミュニケーション能力を有するJSCA建築構造士の有用性・優位性を広くアピールする活動に引き続き注力して参ります。

(3) 性能設計の普及

少子高齢化を迎えた日本において、高度に発展した社会システムを維持していくためには、大地震に対して建築物が大破・崩壊しないだけでなく、継続使用性確保による事業(生活)継続を目標とする耐震性能も必要です。JSCAは、非構造部材の地震被害の軽減に向けた活動および様々な耐震性能メニューを定めた「JSCA性能設計説明書【耐震性能編】」の試行運用に取組んでいます。毎年、日本各地で震度6程度の揺れをともなう大地震が発生しており、特に、南海トラフ地震が発生すると、日本の経済・産業の中心地に壊滅的な被害が生じると危惧されています。私たち建築構造技術者は、過去の震害を教訓にして日々の業務に取組んでいますが、防災・ 減災に少しでも貢献するために、建築物の継続使用性に配慮した「性能設計」の考え方を社会に広めていきたいと考えています。

(4) 木造建築の構造設計技術の普及と向上

技術委員会木質系部会および同部会の構造設計支援WGを中心に木造建築の普及展開に取組んでいます。特に設計事例等を通して中・大規模木造建築の構造設計に関する情報整備を進めており、2019年度には「JSCA版木造建築構造の設計」の改定も予定しています。 また、技術委員会主催で「中大規模木造への取組み」をテーマに報告会を実施しました。一方で、地球環境問題委員会においては、CO2排出削減に向けた取組みとして「中大規模ビル型建物への木材利用に関する提言」を起草し、structure7月号(No.147)に公表しました。今後は、国連で策定されたSDGsの取組みに連動した「JSCAの新しい提言」としてまとめ、社会に向けて発信し活動していきたいと考えています。

(5) 既存建築物の安全・安心の確保

耐震判定を行う一機関として、耐震診断結果や耐震補強計画の妥当性について、実務的観点から第三者として公正に判断する技術評定(判定)業務を継続しています。この業務は、JSCAの主要な事業であり、また重要な社会貢献でもありますので、しっかりと取組んで参ります。


昨年6月の総会後に、協会活動の継続性と安定的運営のために「JSCA中期ロードマップ策定に向けた取組み」として、現状分析と課題について報告しました。建築構造の職能団体としての責務を果たしていくために、適正な会員数の維持、健全な収支の確保、信頼される職能の確立等に向けた中期ロードマップを次年度に策定する予定です。

また、本年4月にトルコ・イスタンブールで第7回世界構造技術者会議(SEWC)、9月に中国・蘭州で日中建築構造技術交流会、さらに10月頃に韓国ソウルで日韓の建築構造ワークショップが開催される予定です。これらの機会を通して、海外の構造エンジニアと連携を深めて国際交流を図りたいと思います。


本年も建築関連団体や関係者各位と協力体制を保ちながら、さまざまな活動を展開していく所存ですので、ご理解・ご支援していただきますようお願いいたします。

本年もよろしくお願いいたします。


※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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