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会長就任にあたって

 

JSCA新会長
小林 秀雄
Hideo Kobayashi

この度、日本建築構造技術者協会の会長に就任しました小林秀雄です。

日本建築構造技術者協会も30周年を迎えてから早4年が経とうとしています。その間に新型コロナ感染拡大を経験し、日本・世界の経済活動と同様に一時はJSCAの活動も停滞しました。ただ、IT環境が時代にマッチしていたのかIT利用により物理的な移動から解放され、どこでも簡単にコミュニケーションが図れるようになりました。結果として、委員会活動や講習会などJSCAの活動も本部・支部にかかわらず効率よく行われることが可能となりました。一方では対面の重要性も改めて認識され、両方の良さを取り入れて積極的に活動していきます。

構造設計においては早くからコンピューターが活用され、建物の構造解析に大きく貢献してきました。JSCAが創立した30年以上前では解析処理速度は遅く、増分解析では数時間かかるのが通常で、解析の合間にディテールを検討するなど、設計している建物全体を俯瞰するには無理のない時間軸の中で設計が行われていた記憶があります。今では、容量や解析処理能力は格段に向上し、大型建物の解析でも瞬時に答えが出るようになりました。また、最適化計算プログラムやAIも構造設計のツールとして出現し、便利になった一方でソフトや解析結果に振り回されてしまうようなことも散見され、構造設計者としての存在意義が問われかねない時代になりました。このような時代だからこそ、構造設計者や構造技術者が性能・技術的側面やデザイン的側面など多角的に建築構造のあるべき姿を議論するJSCAの存在は一層重要になるものと考えています。

脱炭素に向けた法改正が2025年4月より施行されようとしています。その中で4号特例が廃止され、確認申請時には一定規模以上の建築では構造関係規定の図書として構造計算書が要求されます。そのことは広く社会が構造設計の必要性を知り、今まで以上に構造設計者の存在が知られるきっかけとなる可能性があります。良質な社会資本を後世に残す一助を担うことがJSCAの役割と考えます。

以上のことから、活動方針として以下を基本とし進めていきます。

一つ目は、JSCAの持続的活動・発展に注力します。次世代の構造技術者が育つ、成長する環境をつくるためにも、構造設計・構造技術に関わる議論の場、成果を発表する場や創造力を刺激するような場を提供していきます。また、JSCAを構造設計者や構造技術者が所持している価値観とは別に、新しい価値観を見つける場としていきます。

二つ目は、構造設計を取り巻く環境の変化に即した情報発信を随時行っていきます。2025年度からBIM確認申請試行が予定されています。BIM関連についてもJSCAも関係団体として国土交通省の会議に参加・活動していきます。その他に、建築基準法・構造関係規定の見直しなど、JSCAとしての発信や会員への情報共有を継続していきます。

三つ目は、JSCAは建築構造に関わる職能集団であり実務家集団であることを社会に周知していきます。そのためには、会員の一人ひとりがより信頼される構造技術者を目指すことも重要であり、建築構造に関わる職能集団として行政や自治体との連携や関係諸団体との信頼関係を深めていきます。

地球上のすべての建築物は鉄、コンクリートや木など様々な構造材により支えられています。そして人間はその建築物を生活空間として活動しています。後世に良質な社会資本を残していけるよう会員の皆さま方が互いに連携し、活発に活動していくことがJSCAの持続的発展に繋がっていくものと考えています。皆さまのより一層のご支援とご協力をお願いいたします。


※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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