今年度は作品賞6、業績賞2、新人賞4の計12件の応募があった。業務で多忙を極める中、積極的に御参加いただいた応募者にまず感謝したい。応募作品を構造形態で分類すると、空間構造系が3件、鋼構造3件、RC造3件、木質1件と多岐に渡り、内免震・制振技術を含むものが5件であった。業績は耐震補強構法1件、勉強会の活動1件であった。2007年12月18日の第1回審査委員会において応募内容を検討し、全応募案件について現地審査およびヒアリングを行うことを決定した。
現地審査およびヒアリングは1月26日から3月19日までの間に7回に分けて実施された。ほぼ全審査員が全ての案件の現地審査およびヒアリングに参加した上で3月19日の最終審査を行った。まず各応募案件についてコメントを自由に述べ合った後に、各委員の複数票の投票により第一次候補を選出した。この際、作品賞、業績賞、新人賞の表彰数は予め定めず、全てを並列に評価する方式を取る事とした。
第一次投票の結果、2票以上の推薦を得た候補は作品賞4件、新人賞4件であった。特に新人賞は全作品が推薦を獲得し、評価の高さが明らかになった。第一次投票で最高票を集めた「ニコラス・G・ハイエックセンター(作品賞)」および次点の「イグレック(新人賞)」をまず表彰対象として決定した。
次に残った6作品について、再度投票による第2次審査を行った。結果、「武蔵野市防災・安全センター」および「大分県運転免許センター」の新人賞2件が順に高い評価を得た。次点は作品賞の「ビーンズドーム」であった。3件目の表彰対象を「武蔵野市防災・安全センター」に決定し、残りの1件について活発な議論が交わされた。過去新人賞を3件出した前例が無いことから、作品賞より1件選出する、新人賞より1件選出する、表彰対象を3件に留める、の3案を視野に、第一次選出の全作品のレビューを再度行った。作品賞候補については、それぞれ一定以上の水準と評価されたものの、過去の類似物件からの新規性・独自性のレベル、建築的な汎用性や技術の完成度等で作品賞に至らないとする意見もあり、最終的に全委員が推薦した「大分県運転免許センター」を第4の表彰対象として採用することとした。結果的に作品賞1件、新人賞3件の変則的な比率となったが、今年度は若手の活躍が顕著であったことの反映と考え、ご理解を戴きたい。ただし新人賞の位置づけについては今後の動向を踏まえ検討の余地がありそうである。
最後に力作をご応募戴き、ご多忙中現地審査およびヒアリングの労をお取りいただいた全応募者に深く感謝したい。受賞外の現地審査対象候補は以下の通りである。
作品賞:「ワールドシティータワーズ」(前田信之君)、「焼津信用金庫本部ビル」(杉浦盛基君)、「大成札幌ビル」(小室努君)、「安中市立九十九小学校」(稲山正弘君)、「ビーンズドーム」(大氏正嗣君)、業績賞:「ピタコラム工法の開発とその普及」(加藤三晴君)、40有余年にわたる勉強会(関西建築技術研究会)の継続」(辻英一君)、新人賞:「BDS柏の杜オークション会場」(宮里直也君)
残念ながら今回は受賞対象に選べなかったがいずれも秀作であり、構造技術者の資質が問われる昨今において構造設計の創造性を具現化した次世代の構造技術者の良き手本である。今後の諸氏の益々のご活躍を期待したい。
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