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『第19回JSCA賞』新人賞

 

イグレック

写真-1 1階応接室

写真-2 外観

伊藤 利明(いとう としあき)

イグレックの設計

イグレックは、地上12階、高さ39.1mの集合住宅である。平面形状は、長辺方向16.8m、短辺方向9.7mの長楕円形であり立面は曲面的なガラスの優美な外観となっている写真-2。建築家であるオーナーから、基準階床面積は小さくスレンダーな外観であり、最小の構造要素で最大の室内空間を確保するという建築的な要求があった。そこにCFTフラットプレート(スラブ)免震構造を最適な構造と考え採用した。この構造による室内空間は上下スラブ間で均一であり、内部間仕切の自由な配置を可能とするが、強風時の風揺れに対する居住性確保が課題となった。建物架構は主たる4本の柱と厚さ500mmのRCスラブのみで構成し、柱には、高強度・高靭性の性能を確実に発揮できるCFT柱を採用した。CFT柱とフラットプレート(スラブ)の接合部の構造性能には確立されたディテールがなかったが、新しい接合部ディテールを考案し、構造実験により性能を確認した。この架構形式を前提に、地震力に対して耐震性能を確保できる構造として免震構造(基礎免震)を採用した。免震部材には疲労問題のある鋼材系ダンパーなどの風トリガーを設けず、オイルダンパーによる高減衰力を用いて大地震の安全性を確保するとともに、強風に対する居住性の改善効果も期待した構造とした。

図-1 1階平面図 図-2 基準階床伏図
図-3 軸組図・骨組パース
図-4 CFTフラットプレート構造概念図 図-5 免震装置の配置および断面図
コンクリート打設状況

CFTフラットプレート構造の接合部図-4での応力伝達機構は、プレート内部でU字型に折り曲げたスラブ筋が折り曲げ部のコンクリートの支圧と直線部の付着により上下ダイアフラム間のコンクリートに定着され、ダイアフラムおよびリブプレートの鋼板に溶接した頭付きスタッドによりなされるものとした。必要な耐力の確認は解析による検討のほか、構造実験によりその性能を確かめた。

免震装置では、積層ゴムは二次形状係数3.5~4.4、Gs=0.29~0.39の剛性の小さい支承を採用し、減衰力1000kNのオイルダンパーを各方向に3基づつ設けた図-5。基礎固定時の1次固有周期が1.5秒である上部構造は、これらの免震装置により建物全体の周期4.8秒、等価減衰30%、ベースシヤー0.09(極稀地震時)の高減衰免震構造となった。これは風トリガーを持たず、強風時(1年再現期間相当)においても免震層が可動することを許容するものであり、その減衰力により風揺れに対する居住性を改善し、かつ暴風時において過大な変形を生じない免震構造が実現した。

「浮遊するスラブとそれを支える4本の柱」は、露出した新しい構造体と、目に触れない免震という技術を組み合わせることで、この建物を完成度の高い普遍的な建築形態へと昇華させたと思う。本工事において、建築主でありかつ設計者の山口真一郎氏のご理解と後押しにより、このような構造を実現することができたことに厚く感謝の意を表します。

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写真-3-4-5 竣工写真
写真-6 賃貸住宅部分 写真-7 賃貸住宅部分 写真-8 オーナー邸
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建物概要

建物名称 イグレック
所在地 東京都港区白金2丁目
建築主 山口真一郎
設 計 山口真一郎+竹中工務店
施 工 竹中工務店
建物規模 地上12階
建物最高高さ 39.1m
延べ床面積 1420.98m2
建築面積 151.84m2
用 途 共同住宅
構 造 CFTフラットプレート免震構造

構造概要

構造種別 柱 CFT造、床スラブRC造(一部SRC造)
構造形式 CFTフラットプレート免震構造(基礎免震)
構造材料 鉄骨:STK490(柱)
コンクリート 床Fc27,CFT充填コンクリート:Fc42
免震材料 天然積層ゴム,オイルダンパー
基 礎 場所打ちコンクリート杭

※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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