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『第19回JSCA賞』新人賞

 

大分県運転免許センター

写真-1 ワンルームロビー(※)

写真-2 南から見た建物全景(※)

奥野 親正(おくの ちかまさ)

建築計画

計画地は大分スポーツ公園の一角に位置する。W杯サッカーの会場にもなったビックアイを眼下にし、周囲には山間から別府湾につながる豊かな自然が広がる土地である。

免許センターは諸官庁の中でも最も多世代、多様な人々がまんべんなく訪れる施設である。人々の訪れる開放的な土地に、開かれた交通施設を目指すとともに、人口・年齢分布・免許制度の変更など、時代の変化に柔軟に対応できるゆとりある施設として計画している。

建物の特徴であるワンルームロビーは、複雑になりがちなロビー待合・受付空間を一体型に計画し、事務室、講習室、試験室を包含する2層吹抜けの大空間とすることで利用者が建物内での目的地を容易に認識できる場としている。

ロビーを包むガラス面を屏風状に連続させた緩やかい曲線を描く外形は、誰でも迎え入れる施設として柔らかな印象を与えるとともに、山から別府湾につながる広大な自然の眺望を大パノラマとして享受できる場としている。

構造計画

建築計画の中心となる奥行き36m、天井高さ8mのワンルームロビーの自由度の高い空間は、一見してプレートに見えるような薄型梁からなる格子梁と、面内剛性の高い木製水平面材(ラミネーテッドストランドランバー:LSL材)をそのまま仕上材としたハイブリッド構造により、ワッフルスラブのように薄く均一な屋根板を連続させ、かつその構造材を露出させたダイナミックで意匠性の高い屋根架構を実現した。また、ロビー部の柱は格子梁の交差部にある程度の自由度をもって配置する

写真-3 ハイブリッド架構(※)
ことで、空間の自由度をより高めることが可能になった。

建物は、ワンルームロビーの屋根架構を柱CFT造、梁鉄骨造などとして水平剛性を高めた耐震要素となるキューブに接続させた計画としている。ワンルームロビーの屋根は、LSL材により屋根の面内剛性を確保し、地震時の水平力をキューブ(本体)に伝達している。ロビー柱は、両端ピン接合とすることにより地震力から解放し、鉛直支持柱とすることで細径丸柱(φ190.7)を実現した。

図-1 構造概要図
図-2 標準ディテール 1.8m×1.8mグリッド
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鉄骨格子梁

薄型梁による構造性能、施工性の向上

格子梁は、1.8m×1.8mグリッドに計画し、2枚のFB-9×500mm鋼板をBOX状に組合せて薄型梁として横座屈抵抗性を上げることで鉛直支持能力の高い架構を実現した。

交差部は、FB-50×100×500に裏当金兼用ガセットプレートを取り付けて薄型梁を差込む納まりにより、ボルトをなくして効率的な突合せ溶接として高い意匠性を実現した。

1.8×5.4mユニット現場搬入、ヤード内5.4×5.4mユニット溶接、繋ぎ梁ピースの建物内から外への順次溶接により、全溶接構造のひずみ抑制に最大限配慮した工法を実現した。

写真-4 格子梁の施工
写真-5 格子梁交差部 写真-6 格子梁全体(外装材施工前)

木製水平面材

LSL材による意匠性向上と面内剛性確保

地震時の水平力を本体構造部分に伝達するために面内剛性の高い木製水平面材(ラミネーテッドストランドランバー:LSL材)を採用し、仕上げ材兼用として意匠性を高めた。

LSL材は木製なので、やわらかい空間を形成し、鋼板床、コンクリート床版に比べて軽量で加工性、断熱性、現場施工性、設備電気への対応性に優れている。

本来、梁材使用されている均質な材料であるLSL材は、1.8×9.1m(原板最大t60×2250×10970)の大板が可能で格子梁との接合性に優れている。

写真-7 LSL材-格子梁接合部 写真-8 LSL大板の吊込 写真-9 LSL板と格子梁の施工
写真-10 LSL材接合部(中間部上面) 写真-11 LSL板の建入 写真-12 LSL板施工完了

細径丸柱

柱頭・柱脚のピン接合の採用

柱頭、柱脚をピン接合とすることで地震力から解放し、軸力のみを伝達する柱とし、細径丸柱を実現した。

接合部は、メタルタッチにより鉛直力を伝達し、1/50rad変形時までボルトが干渉しないようにクリアランスを確保してシンプルで低コストなピン接合を実現した。上下地震動時は、ピンボルト

写真-13 柱頭部 写真-14 柱脚部
により格子梁、下部架構と柱を一体化している。

柱は、さらに1/50rad変形時にP-δ効果による曲げモーメントを見込んだ設計としてリタンダンシーにも配慮した。

建物概要

建物名称 大分県運転免許センター
建築場所 大分県大分市大字松岡6687
主用途 事務所(運転免許センター)
建築面積 5050.76m2
延床面積 9632.62m2
階数 地上 4階
最高部高さ 20.61 m

構造概要

基 礎 杭基礎(プレボーリング拡大根固工法)
架 構 S造(柱: CFT造)、RC造、SRC造
耐震壁 鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造

(※)印 写真撮影は岡本公二氏による


※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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