structure No.96 2005年10月号
既存木造建物の耐震改修を如何に促進させるか -JSCAの役割-

 

第1章 戸建て木造住宅の現状と課題

1-1 戸建て木造住宅の耐震診断・改修の意義
     -次のビッグ・ワンに備えて-

耐震改修がなかなか進まない。問題は技術的な分野にとどまらず社会環境にも存在している。注目した点は次の諸問題である:1)既存不適格の意味、2)構法の多様性による木造住宅構造特性の個別性、3)建築基準法における仕様規定、4)強度指向の耐震基準、5)維持管理を前提とした日本の木造住宅、6)木造住宅を担う産業構造の変化、7)地震における正常化偏見、8)耐震設計への不信感。耐震改修を促進する方策として、憲法12条・25条を考慮して8項目を挙げる。その基本にあるのは市民と専門家の間の共通言語である。
樫原健一

1-2 木造住宅の耐震設計と改修技術の現状

木造住宅は大地震によってこれまで何度も甚大な被害を受けてきた。同じ被害を繰り返さないためには過去に学び、今後の方策を模索しなければならない。本稿では木造住宅の耐震設計法と耐震診断法の変遷や過去の地震被害を概説しつつ、既存木造住宅の耐震性能が劣ることや、繰り返される被害の内容について論じている。また、近年開発が盛んである耐震補強技術を取り上げ、その技術的評価の際の問題点と現状についても概説した。
五十田 博

1-3 住宅・建築物の地震防災対策について

昨年発生した新潟県中越地震、今年3月に発生した福岡県西方沖地震は記憶に新しいところである。また、10年前に発生した阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊による圧死と思われる死者数が9割を占めており、住宅・建築物の耐震化を進めることが重要な課題となっている。このため、国土交通省においては、これまで税や融資制度の創設等により耐震改修を行いやすい環境を整備するとともに、重点的に耐震化を図るべき地域については、都道府県又は市町村と連携して直接的に耐震改修に対する助成を実施してきた。しかしながら、耐震改修はなかなか進んでおらず、建替え等による更新を待っていては長期間を要するため施策の充実による促進が必要となっている。
石坂 聡

※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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