レンガ造りの建物をいくつかご紹介したので、レンガ造についても、少しご説明します。レンガ造の雰囲気はなかなか良いものなので、壁の外側だけをレンガ造に模して造られている建物は多数ありますが、構造体としてレンガを積み上げて作る建物は、最近の日本では殆ど建てられなくなりました。しかし建てようと思えば、今でも建てることができます。
レンガ造は建築基準法では組積造という分類に入ります。石積・ブロック積と同じです。組積造は階数、壁の長さ・厚さ及び壁に囲まれる面積、などの制限が設けてあります。難しいことは後にして、この中で少し気になるのが壁の厚さです。
壁の厚さは建物の階数及び壁の長さにより変わります。階数が高くなると重さが増すので、壁を厚くして耐える様にします。又壁の長さが長くなると横に倒れようとする力が増します。鉄筋等で補強すれば倒れづらくなりますが、無筋の組積造では壁を厚くすることで倒れづらくしています。レンガの大きさは縦10cm、横21cm、厚さ6cmが標準寸法となっています。20cmの壁厚であれば、レンガの横幅21cmを使えば一列ですみますが、30cm、40cm以上となると2列以上にしなければなりません。
明治時代、レンガ造は海外から輸入され、日本では瓦(かわら)屋さんで造られたため煉瓦と書くようになったようです。それに、積み方も当時の海外の積み方に習いましたので、明治前期はフランス積、後期から昭和初期にかけてはイギリス積が主流でした。
フランス積は横一段に長手面と小口面が交互に並ぶ積み方。イギリス積は長手面ばかりの段と小口面ばかりの段が交互になる積み方です。
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フランス積み | イギリス積み |
上記2通りの他にも長手のみの段を積み重ねる最も単純な積み方の長手積、その逆で小口のみの小口積とあります。
いずれにしても、丈夫な建物を造るために壁を厚くする工夫及びデザイン的にも美しく見せる工夫があります。
このレンガ造、コンクリートや新建材等の台等により、現在は殆ど建てられていません。よってレンガの需要も少なくなり、日本のレンガ製造の主要会社であった“日本煉瓦製造(埼玉県深谷市)”も解散・清算するそうです。日本の近代文化を支えたものが無くなるのは非常に寂しい気持ちになります。ヨーロッパの国々や、伝統文化を守るアジア諸国と同じように自国の文化に誇りを持ち、文化を次世代に継承するように心掛けたいと思います。
さて、これを見てレンガ造で建物を建てたいと思われた方に、レンガ造の建物を、実際に造る際に心掛けなければならない点を表に示します。今までの、理論や実験から最低限の性能を発揮できるように考えられたものなので守って欲しい制限です。もっと、詳しく知りたい場合は、壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)日本建築学会(現時点最新は2006.3.15版)を見てください。
階 | 壁長さ5m以下の 壁厚(mm) |
壁長さ5mを超え10m以下の 壁厚(mm) |
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平屋 | 200 | 300 |
2,3階建て | 300 | 400 |
階 | 最小壁率 mm2/m2 |
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平屋、最上階 | 21000 |
上から2つ目の階 | 40000 |
上から3つ目の階 | 58000 |
また、使われるレンガにもちょっと規定があります。材料は、JIS A 5210 に(建築用セラミックメ?ソンリーユニット)に出ていますが、ここで使える強度は圧縮強度として 10N/mm2以上 のものです。
また、コンクリートや目地に使うモルタルは、圧縮強度 18N/mm2以上 のものです。以上のような約束が有りますが、これも、安全を思ってのことです。造り方に拠っては、大変丈夫な建物ができます。
世界では、日干しレンガや焼成レンガを、いまも主要な建築構造材料として使っている地域が有り、地震で大変な被害を出していますが、地震国の日本での研究や実績から、安全なレンガ造の普及をめざして活動をしている人たちもいて、成果をあげているようです。他国に日本の技術が役立ち、伝承し、発展し、また次の地域へと、技術の歴史が見えてくるようです。
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※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。