「アンチエイジング(抗老化)」は女性にとって魅力的な言葉で、「アンチエイジング」効果があるという化粧品や健康食品も多く販売され、健康で快適な生活を目指した日本アンチエイジング医療協会という団体もあります。「エイジング」を経験の豊かさとして敬う風習もありますが、女心は「エイジング」より「アンチエイジング」に惹かれ、私も効果のほどに疑問を抱きつつも「アンチエイジング」効果をうたっている化粧品を購入しています。
こんな世の中なのに、建物の「アンチエイジング(長寿命化)」の関心は非常に少なく残念に感じています。知り合いに、自宅が建築後30数年経ったので取り壊して建て直した、と言われた時は「もったいない」の言葉も出ないほどビックリしました。しかし、週刊誌に「木造住宅は25年位の耐用年数で・・・」とある建築家が書かれていたので、30数年での建て替えは一般的なのかもしれません。右の図は小松先生が調査された木造住宅の寿命で25年から30年で取り壊される率が高いことがわかります。これでは住宅ローンから一生逃れられない人生になってしまいますが、気にならないのでしょうか。
法隆寺のようにとは言えませんが、数百年住み続けている木造住宅があることを多くの方に知っていただき、適切な手入れを続けて代々住み続けるとか、古い建物を移築し古材を再利用するなど、年を経た建物を受け継ぐ文化をもっともっと大切にしていきたいと思います。
「アンチエイジング」化粧品は比較的高価で1万円を超える商品もあり、化粧水・美容液・クリームと複数の商品を必要とする仕組みですが、「美白」と共に多くのメーカーから出されているのは、それだけ市場ニーズがある証拠なのでしょう。一方、建築の「アンチエイジング」にかける費用はと考えると、マンションの修繕積立金が一万円以下という管理組合も多く、しかも住民の反対でなかなか値上げが出来ないのが実情と聞きます。化粧品と比較できないかもしれませんが、建設にかかる費用から考えると何ともアンバランスに感じます。
昨年の新潟県中越地震に続いて福岡県西方沖地震が発生しました。あるアンケート調査では、大きな地震が来るとどうせ潰れてしまうから、と家の手入れをしない方が居られる一方、自分で出来る範囲で自宅の耐震安全性を高くしたいと答えられている方も居られました。「住」に関しては直したり補強したりするのに専門家の熟練した技術や道具がないと難しいこともあり、「衣・食」と同じようにはいかないかもしれませんが、自分達で出来ること、楽しむことを増やして、ちょっとした模様替えや耐震補強を自分で出来るようになると、「住」への意識や関心が深まり、安全な建築が多くなるのではないでしょうか。法律や安全性の確認方法、熟練しなくても使える道具など解決しなければならないことはたくさんあるのですが、できるだけ住んでいる方が自分で取り組むことができるような「仕組み」を作ることができないかと思っています。
また建築の「アンチエイジング」を進める時に骨組みが丈夫であることが大切なポイントになります。人間も骨が丈夫な人、若い時に小魚を食べたり牛乳をよく飲んだ

人は「骨粗鬆症」になりにくく活き活きと暮らせます。永く使えるしっかりした骨組みの建築を造るために日本建築構造技術者協会(JSCA)の会員である構造設計者は頑張って仕事をしています。
世代交代などによる使い方の変化にも柔軟に対応でき、安全な「アンチエイジング」建築を造りたいと考えられている方はぜひJSCAの構造設計者にもご相談ください。
水津 牧子(すいつ まきこ) 選挙管理委員会委員長