『地震-3』- 地震の大きさ

 
地震の大きさを表す単位には、長さや重さを表す単位のメートルやキログラムと同じように、震度ガル(gal)カイン(kine)マグニチュード(M)、の4つの単位がよくが用いられています。同じ地震でもそれぞれの単位で表せますが、表している内容が違います。この4つの中で震度ガルカインは観測しているその地点での地震の揺れ方(地震動)の大きさを表しています。一方、マグニチュードは地震そのものの規模を表しています。(※色文字には別途説明表示があります。)

皆さんがよく耳にしたり、テレビの速報で流される震度は、もともとはその場所での地震の被害程度や人間の受ける感じを、大まかに7つに分けて表したものです。ですから、”どこどこ市では震度3”と言ったように場所場所で違って来ます。もちろん数値が大きいほど、大きな揺れを表します。一般的には地震の発生した場所から離れるほど震度は小さい値を示しますが、時には、和歌山沖の地震で関東地方が大きく揺れ、関西地方はそれほど揺れなかったというような事もあります。(「知っていますか地震1040101」で説明した、同じプレートの上の2地点なら遠くのほうが小さいのですが、違うプレートの2地点ですとそうも言えないようです。)また、一般的に埋立地のような柔らかい地盤のところでは固い地盤のところより震度が大きくなる傾向にあります。

同じように、ガルカインも観測しているその地点での地震動の大きさを表しますが、震度よりももう少し揺れ方を正確に(科学的に)表しています。
ガルは地震動の大きさを「加速度」で表したものです。自動車が発進する時に、ある大きさの速度に達するまでの時間が短かければ短いほど大きな加速度が加わります。急発進をすると座席に強く押し付けられるように感じられるのはこの加速度の仕業です。地震があると、地面の揺れよって建物や人に加速度が働きます。この作用した加速度の最大値を使って地震動の大きさを表わすことがあります。この地震ではこの場所で最大何ガルの加速度が生じたと使います。これも大きい数値程大きな地震動であったことをあらわしています。関東大震災の時がおよそ330ガル、阪神大震災では最大800ガルの加速度が生じたと言われています。ところが、最近、仙台で地震がおきたときには、それほど大きな地震というわけではなかったのに、丘の上にあった地震計が、思いもかけぬ1000ガルを超えた記録が取れました。これは、傾斜面から平らな地形に移る突出角部分等、地面の形によっては、局部的に大きな地震になることがあると説明されています。(阪神淡路大震災でも、神戸付近の地盤の形が地震を大きくしたのが大震災の一因とされています。)

カインは地震動の大きさを「速度」の単位で表したものです。自動車の発進にたとえると、同じ加速度でも、言い換えれば同じようにアクセルを踏んでも、どのくらいの時間アクセルを踏み続けたかで、速度や移動距離が変わって来ます。建物に加わる地震動でも、同様に、最大加速度が同じ地震動であっても、加速度の継続時間などによって速度に違いが生じます。建物にとっても地震動の速度が重要になりますので、この速度の最大値で地震動を表わすことがあります。最大何カインの地震動が働いたと言うように使います。もちろん大きい数値程大きな地震動であったことを表しています。

実際の建物が受ける地震動の大きさは、地震の状況をおおまかに示した震度ではなくて、ガルカインで表すことが一般的です。
たとえば、建物は地震によって東西南北上下と立体的に3方向に揺られますので、それぞれの方向に“最大何ガルの地震動が働いた”と言うように表します。
建物が地震に対して安全かどうかを検討する場合には、ときには、過去に起きた地震の記録を用いて検討します。よく使う地震記録は次のようなものですが、必ずしも大きい地震ばかりではありません。東京101は小さい地震の記録ですが、東京の地盤の性質をよく現しているため、7.9カインを25カインや50カインの大きい地震に換算して用いています。

  最大加速度 最大速度
記録名(年) ガル(gal)
(1cm/sec2)
カイン(kine)
(1cm/sec)
エルセントロNS(1940) 341.7 34.07
タフトEW(1952) 175.9 17.81
東京101NS(1956) 73.7 7.90
八戸NS(1968) 225.0 34.08


HP部会 O.Y

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